平成24年9月号

さんぽみち9月号もくじ

・創春館通所リハビリ納涼祭!
・今月の事業所便り
・吾輩はジータである。
・院長先生の健康豆知識
・感謝祭のお知らせ
・行事予定
・文芸作品
・編集後記

 

創春館通所リハビリ納涼祭!

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8月8日(水)~11日(土)の4日間、創春館とクリニックの、合同通所リハビリ納涼祭を開催しました。“お祭り”に『盆踊り』と『模擬店』は欠かせません。利用者様の打つ太鼓に合わせて『東京音頭』と『炭坑節音頭』で祭りの始まりです。「盆踊り」の後は『模擬店』。毎年色々な『模擬店』が登場する通所リハビリの納涼祭、今年の目玉はなんと言っても初めての試みとなる『流しそうめん』です。暑い暑い夏にピッタリ!緩やかに流れる水の音は風情があり、涼しさを演出してくれました。利用者様の人気も上々で、皆さん箸やフォークを片手に一生懸命そうめんをすくっておられました。上流で上手にすくう方が多いと、下流では「まだ来ない、まだ来ない」と声がかかり、麺が流れて来るのを待ちきれない様子でした。

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また、昨年に引き続き出店した「お好み焼き」、「かき氷」も利用者の皆さんに喜んでいただきました。お好み焼きに関しては、味見してくださった理事長に「これはうまい!明石焼きにも負けないね。」とおほめのことばをいただいたくらいです。(自我自賛です)「模擬店」は食べるものだけではありません。今年の納涼祭において、連日ダントツの人気を誇ったのが射的でした。本物の射的さながらの作りで、3発放ち当てた方には様々な景品がプレゼントされます。「模擬店」が始まると皆様一斉に射的場に集まり、目を細めてライフルを握り、当りを目掛けて弾を放っていました。1つも命中せずに、悔しそうな表情の方がおられる一方、命中した方の喜びは大きく、景品かざして満面の笑みでした。もう1つのゲームは魚釣りです。射的を「動」とするなら魚釣りは「静」、集中力の競い合いです。クリップの付いた、小さな魚と立体的にした大きな魚を、竿の先に取り付けた磁石で釣り上げ、制限時間30秒以内にどれだけ多くの魚を釣るか、それによって景品が決まります。小さな魚より大きな魚の方が得点が高いので、皆さん大物を狙っての真剣勝負でした。

最終日の4日目は、「ビクトリー川田&ブルーサウンズ」&「いくこフラスクール」の方々に締めくくりをお願いしました。ハワイアンの演奏とフラダンスはまさに納涼祭のために準備して頂いたプログラム、夏の暑さを吹き飛ばすひとときでした。最後は通所リハビリ恒例の「百歳音頭」を踊り今年の納涼祭は幕を閉じました。「盆踊り」で始まったお祭りは「盆踊り」で終る。お祭りの醍醐味を十分味わうことのできた懐かしく、楽しい4日間でした。

 

今月の事業所便り

ケアセンター朱咲
夏はやっぱりかき氷

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ケアセンター朱咲では8月12日にかき氷作りを行ないました。天気もよく、かき氷を食べるには最適な日となりました。利用者の方がシロップのブルーハワイを見て「こんなの初めて見たよ。かけて」との声があり、それを食べたところ「美味しい」と話され、「もっと食べたい」と笑顔が見られました。トッピングでみかんを乗せたり、練乳をかけたり色々なシロップをかけて「素敵なかき氷」との声があり、とても喜んでいただけた様子でした。「夏はやっぱ、かき氷だよね」とおっしゃり夏を感じていただけたようです。

 

療養棟3階
自家菜園で育てた枝豆で一杯?

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専門棟3階では23日(木)に、夏を楽しむをテーマに「夏祭りで話され、テーマ通り夏を感じ楽しむ事が出来ました」を開催しました。模擬店として綿菓子とたこ焼き、かき氷、そうめん、3階で育てた枝豆、プチトマトを準備し、利用者様と職員で自由な時間を楽しむことができました。参加された利用者様には、とても「おいしかった。」「また、お願いします。」と笑顔で話され、テーマ通り夏を感じ楽しむ事が出来ました。。

 

わきあいあい
涼を求めて赤城山

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わきあいあいでは8月17日に赤城山ドライブに出掛けました。連日の猛暑でしたので、夏の涼をもとめ、赤城山方面へ車を走らせました。湖畔周辺はさわやかな風が吹き、まるで別世界のようでした。一時の涼しさを味わい皆さんとても喜んで下さいました。 

 

クリニック通所リハビリ
遂に完成!刺繍糸の絵“白鳥の城

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6月号のさんぽみちでも紹介させていただいた刺繍糸の絵ですが、新しい作品が完成しました。今回も、前回の作品を作った利用者様が作ってくれました、「白鳥の城」です。刺繍糸の絵は、糊の付いたボードに決められた色の刺繍糸を貼っていき、巻き付けて完成させますが、今回もお城の窓など細かいところがたくさんありました。ご本人も「今までで、一番難しかった」と話されていました。それでも左手を器用に使い、肩こりとも戦いながら、完成させることが出来ました。 この作品はクリニックのフロアに飾らせて頂いています。他にもいろいろな作品が飾ってありますので、興味のある方は是非、足を運んでみて下さい。

 

GHゆめさき
大盛況に終わった、納涼祭!

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グループホームゆめさきでは、8月26日に納涼祭を行いました。当日は職員も利用者様も、男性は甚平、女性は浴衣を着て参加して、お祭り気分をあじわっていただきました。「浴衣なんて何十年ぶり?」ご家族の方に浴衣を持ってきていただき、何日も前から楽しみにされていました。浴衣姿は、若々しくとても綺麗でした。ご家族の方、近隣の方に、たくさん来ていただき、用意したテーブル、イスに座りきれないほどでした。歌謡ショーを見ながら、焼きそばや焼きまんじゅう、かき氷をたくさん食べられていました。 ゆめさきでは、盆踊り用にゆめさき小唄を作り、振付を皆で考え毎日練習してきました。利用者の方が職員よりしっかり振付を覚えており、見本になって踊って下さいました。当日は、忙しいなか、他部署の職員、浴衣の着付けに来て下さった美容院の方、歌謡ショーを開いて下さった方、たくさんのボランティアさんに協力していただき、大盛況で終わる事ができました。本当にありがとうございました。

 

しらさぎ
ご家族も一緒に納涼祭

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GHしらさぎでは、8月10日に納涼祭を行ないました。今年はしらさぎでは初めての試みとして、ご家族も招待しての納涼祭となりました。施設長と事務長の挨拶のあと、スイカ割りや駄菓子釣り等を行ないながら、利用者の皆さんが、ご家族と和やかにすごされ、用意した焼きそばや、トウモロコシなどを召し上がっていました。そのあと、皆で盆踊りや、ご家族にも協力いただいてお神輿を担いで、納涼祭は大いに盛り上がり、幕を閉じることが出来ました。今後も皆さんに楽しんでいただけるイベントを企画していきたいと思います。

ご家族の皆さん、御忙しいなか出席していただき、本当にありがとうございました。

 

明  月
芸術の秋を先取り?デッサン大会!

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デイサービス明月では、8月15日にデッサン大会を行いました。梨と缶ジュースを机の上において、画用紙をにらみ、鉛筆を持ち、よーく眺めてデッサン開始。普段、塗り絵をすることが多い利用者様たちですが、一から絵を描くのは全く勝手が違うようで、皆さん悪戦苦闘されていました。しかし、職員にコツを尋ねたり、利用者様同士で相談したりしながら、ようやく下書きが完成。その後、色鉛筆や水彩絵の具、クレヨンなどで思い思いの色に塗り上げて、出来上がり。すばらしい作品が何枚も生まれました。もうすぐ季節は秋。暑さが和らいだら、外で写生大会なんかも行いたいです。

 

涼風の家
涼風祭開催しました

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昨年は台風接近により中止となった涼風祭を、今年は無事に行うことができました。入居者様、家族の皆様、そして地元の皆様と、大勢の方を招待し、下平区長様ご夫妻の厚意による手作りの冷や汁うどん、地元の同好会の皆様によるフラダンスを楽しんでいただきました。フラダンスの合間には、甚平のおしりを破ったスタッフがいて、思わぬ余興となりました。最後は、全員で盆踊りを踊って締めくくりました。涼風祭を行うにあたり、下平区長様と奥様、事務長、ゆめさきのスタッフのみなさんには協力をいただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。

 

あかしあの里Ⅲ
大はしゃぎの流しそうめん

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8月22日に、流しそうめんをしました。皆さん流れてくるそうめんに大はしゃぎで手を出しますが、1回で取れる方、取れなくて手でとる方、慌ててお箸を流してしまう方、といろいろいて、楽しいイベントになりました。皆さんからも「楽しかったよ。」「またやってくれよ。」との感想をいただき、ぜひ暑い夏のうちにもう一度行いたいと思います。

 

DSゆめさき
毎年恒例のゆめさき納涼祭

「ワッショイ、ワッショイ」大きな掛け声とともに手作りのお神輿を担いだ利用者様が館内を練り歩き、ゆめさき納涼祭のスタートです・・・。デイサービスセンターゆめさきでは、8月27日に毎年恒例のゆめさき納涼祭を開催しました。今年の納涼祭は、お神輿の練り歩きから始まり、食事の時間からお祭り気分を味わっていただこうと、野外にて『やきそば』や『フランクフルト』を調理し、室内ではブッチーライブ、院長先生と事務長によるカラオケショーを食べながら鑑賞でき、おおいに盛り上がりを見せました。食後にはゆめさき職員による『お囃子』を披露。この日のためにと、勤務終了後に練習した甲斐あって、息ピッタリの演奏を披露することができました。最後に東京音頭・炭坑節を利用者様と一緒に踊り、納涼祭を最後まで楽しんでいただくことができました。納涼祭当日に、グループホームゆめさきや、グループホーム涼風からの参加もあり、例年以上の盛り上がりをみせ無事終了することができました。利用者様・職員とも沢山の笑顔とパワーをもらい、皆様にとって今年の夏の最高に思い出になったかと思います。

 

あかしあの里Ⅱ
大好評のパンバイキング

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あかしあの里Ⅱでは、8月9日にパンバイキングを行いました。お皿にお好きなパンを取り、焼きたてのパンの味を楽しんでいただきました。普段辛い物が苦手な方も「このカレーパンなら食べられるよ」と3、4個甘いパンを一緒に食べられました。皆さんパンが大好きなので「たまにはいいね。また食べたいね」との感想がきけました。涼しくなったら外食も検討し、気分転換を図っていきたいと思います。

 

春らんらん
美味しかった手作りおはぎ

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春らんらんでは8月14日におはぎ作りを実施しました。グループホーム、小規模多機能ホーム両利用者様を対象に、季節感と手作りのおやつを味わっていただく事を目的とし、利用者様、職員共に協力しながら、美味しいおはぎを作ることが出来ました。あんこときなこの、2種類のおはぎを作りましたが、どちらも大好評でした。利用者様からは、昔はよく手作りしたとの声も聞かれ、当時を思い出しながら楽しんでいただけたようでした。

 

あかしあの里Ⅰ
暗くなるまで待って・・・

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8月31日の夕方六時から夕涼み会を行いました。花火をするにはまだ明るいので、暗くなるまでビール(ノンアルコール)を飲んで、枝豆やおつまみを食べながら暗くなるのを待ちました。いよいよ日が落ちて暗くなると、入居者様に手持ち花火を持っていただきスタート。少し離れたところでは打ち上げ花火もあげ「きれいだね~」「花火なんて久しぶり!」と懐かしさに浸り喜ばれる声が聞くことが出来、夏の楽しいひと時を過ごす事が出来ました。

 

星辰の家
男性は食べる専門??

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星辰の家では8月21日に小規模・グループホーム利用者様合同でおやつ作りをしました。今回は、おはぎを作りました。職員は経験がない事だったので、利用者の方々に聞きながらのおやつ作りになりました。最初は上手く出来ませんでしたが、利用者の方々の指導を受けながら、何とかおはぎに近い物が出来ました。一部の男性利用者は「俺は食べる専門だから」と話され、たくさん食べられました。他の利用者も「美味しく出来たね」や「いっぱい食べたよ」と喜びの声がありました。おはぎ作りは初めてでしたが、利用者の方々に協力していただき無事に出来ました。これからも色々な物を利用者の方々と作っていき、喜んでいただきたいと思います。

 

療養棟二階
嗚呼、人生に感動あり??

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療養棟二階では8月29日にお誕生日会を実施いたしました。今月は3名の利用者様がお誕生日を迎え、それぞれ創春館での生活ぶりを、スクリーンを使って紹介しました。買い物ツアーやおやつ作り、普段の何気ない瞬間やレクの時間での笑顔など、ご家族や職員など、その瞬間にいなければ見れないものを紹介させていただきました。また、職員の生い立ちも紹介させていただき、利用者様からも「可愛いね。」「今と変らないね。」など、笑いあり、感動ありのお誕生日会となりました。これからもお誕生日のお祝いと共に、利用者様に感動を創っていきたいと思います。

 

吾輩はジータである そしてまた貴方に恋している

東郷 彦四郎

第二十章 『六十歳の花嫁姿』

一九八五年二月十九日、リンさんと慰問団一行をのせた飛行機は、硫黄島に降り立った。戦後、東京都に返還されたとはいえ、飛行機で三時間以上かかる南海の島は、一行にとって異郷の地であった。リンさんは、ザワザワとみんなの後にくっついて出口に向かった。タラップから滑走路に足をつけた時、冬の東京とは別世界の、ギラギラしたまぶしい光線と、ムッとするような湿った生温かい空気、足元から伝わる熱気、そして、かすかにプンと鼻をつく硫黄の匂いに、生れてはじめての、「熱帯」というものの風土を強烈に実感した。身体も心も休める所とてない、赤ちゃけた土と岩が目にせまる風景を見まわした時、おもはず、「こんなところで…、こんなところで…」という思いがあふれ、涙がこぼれそうになった。「毎日、こんな暑い所で生活し、暑い地中にもぐり、戦ったんだ…」「何の為に、誰の為に、こんな所で死んでいかなければならなかったの…」と、とめどなく、やりきれない思いが湧いてきた。慰問団の人達も思いは同じだったのでしょう。僧侶姿のW智氏に導かれた一行は、言葉少ない集団となっていた。

現在、記念式典の行なわれた場所には、記念碑が建っている。硫黄島を象徴する摺鉢山の麓、南に太平洋を見下ろす場所である。記念碑の南向きの片面には、英語で「リユニオン・オブ・オナー」。反対側には、日本語で「再会の祈り」と大きく書かれ、それぞれ英文と日本文で、同じ主旨の文章が書かれている。

「硫黄島四十周年に当たり、會っての日米軍人は本人茲に、平和と友好の裡に同じ砂浜の上に再会す。我々同志は死生を越えて、勇気と名誉とを以って戦ったことを銘記すると共に、硫黄島での我々の犠牲を常に心に留め、且つ決して之を繰り返すことのないように祈る次第である。」

 昭和六十年二月十九日

  米国浜兵隊

 第三第四師団協会

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そして、大地にぽつんと建てられた記念碑が、まるで整列の目じるしでもあるかのように、記念碑の南側に、東京から別の飛行機で来た約二百五十人位の米国人、北側に、百人位の日本人が、相向かいで並び立った。リンさんは、山口から来ていた真一の妹のトシさん、石川と、三人かたまるようにして並んだ。

リンさん、トシさんは和服の喪服で、石川はグレイの背広を着て、リンさんには、N大二高の野球のボール、トシさんの手には、山口から持って来た干し柿が握られていた。

まず、米国のR・ホスキンス少佐が碑の前に立ち、開会宣言をのべ、続いて硫黄島協会の内山明が挨拶した。幾人かの日米の人物の紹介の後、二人の米牧師の礼拝が行われた。

日本には一人の僧侶がいた。硫黄島生き残りで、この式典産みの親でもあるW智である。墨染めの衣に黄色の袈裟をまとっていた。W智が読経をはじめると、幾人かの白衣を着た女性達が、色とりどりの蓮の花びらを型どった紙をふりまき、山伏姿の青年が法螺貝を吹きながら、みんなのまわりをまわった。アメリカ人たちは、珍しくも美しい花びらを競うように拾いあげた。読経は五分も続いただろうか。最後にW智が「ナームアーミダンブ」と唱えると、白衣の女性達が、同じような抑揚で「ナームアーミダンブ」と唱和した。参列者の幾人かが同じように唱和しだすと、「ナームアーミダンブ」が大きく拡がり、最後には、アメリカ人まで口を合わせ、一大合唱となった。

合掌を解き、米牧師に向き合ったW智は、歩みより、お互いぐっと抱き合った。まるでそれが合図でもあるかのように、催眠術にかかったかのように、向かい合ったアメリカ人、日本人は互いに歩みよった。

リンさんのところには、初老のアメリカ人が、ニコニコとした笑顔で近づき、リンさんのボールを指さしながら、「ベースボールプレヤ?」とたずねた。リンさん高校生の野球部員がくれたんです、と言おうと思うが、英語では何と応えていいか分からず、「プレゼント フォー ミ」と叫んだ。

「オープレゼント」と言いながら、名前の書かれたボールを不思議そうに手にする元アメリカ兵。思わずリンさんアメリカ兵の手を握る。自分の手を握りながら、顔を伏せるようにして、肩をふるわせる女性の肩に、そっと手を寄せつつ、今にも泣き出しそうな元海兵隊員。あちらでは、ためらいがちに握手してた男同士が、やがてがっちりと抱き合い、泣き出してしまっていた。こちらでは、この戦場で手にした記念の品を“敵”に返している人がいた。

そして、また別の所では、日本の元兵士が、アメリカの少年に、日本海軍の帽子をのせ、「君のおじいさんに、鉄砲で打たれたんだよ」とでも話しているのか、少年を間にはさんで、日米の元兵士が、楽しそうに談笑している姿もみられた。

記念式典も終わり、人々が鎮魂の丘に行こうとする時、リンさんは、石川に連れられ、自衛隊の兵舎に向かっていた。真一が亡くなったと思われる場所で、ウェディングドレス姿を見せる予定であった。着換えの為、トシさんも付きそった。部屋から出てきたトシさんが、「石川さん、用意ができました。」と告げたのは、三十分も経った頃の事だろうか。白いティアラを頭に飾り、胸もとから肩にかけて、花びらの刺しゅうのついた、純白のウェディングドレス姿のリンさんがあらわれた。四十年近く前、リンさんが自分で作ったナイロン製のウェディングドレスである。うっすらと紅をひいた口唇と、化粧をほどこされた顔は、新婦と呼ぶのにふさわしい姿になっていた。

石川は「リンさん、とてもきれいですよ」、と叫んでいた。リンさんは、いつものように、恥ずかしげにおもてを伏せた。リンさんとトシさんと、石川は、自衛隊員の運転するジープに乗り込み、目的地へ向かった。ほんの数分も走ったろうか、リンさんは目の前の光景に驚き、恥ずかしさに、身も縮まる思いだった。人気のないと思われた所に、記念式典に参列した人達がアーケードを作るようにして集合していた。真正面には、二人の米牧師と、アロハシャツに着換えたW智がいた。全ては、石川とW智が仕組んだ演出だった。

みんなが鎮魂の丘に集まった時、W智は通訳付きで、こう話していた。

「みなさん、本日参加の日本人女性の中で、お手製のウェディングドレスを持ってきた方がいます。彼女のウェディングドレスを見る筈だった男性は、この地に眠っています。彼女はここでひっそりとドレスを着たいと話されたそうです。私は、彼女の意にそわないかも知れませんが、みんなでドレス姿をお祝いしたいと思いました。みなさん、いかがでしょうか。」突然の展開に、静寂の時間があったが、しばらくして、アメリカ人から歓声の声が、日本人からは熱烈な拍手が湧き起こった。そうしてみんなは、リンさんの到着を待っていたのである。

車から降りたリンさんの両脇に、トシと石川が並ぶと、W智が大きな声で、「上をむーいてあーるこーおおー」と歌い出した。坂本九さんの歌だった。アメリカ人にもよく知られたその歌の合唱の中、三人は人々の間を歩いていく筈だったが、リンさんは足がすくんで歩けなかった。リンさんを促す筈の、トシも石川も歩けず、三人は固まってしまった。石川は笑顔を作り、必死になって、この日の為に持ってきた、真一の片身のスズ、リンさんが真一に渡したプレゼントのスズを右手でかかげ、必死になって振った。

リンさんは、とめどなく涙が流れ、トシ、石川も涙が止まらなかった。人々は三人に紙ふぶきを振りまき、押し出すように前方へ運んだ。スズを振りつづけながら、石川は思わず、空に向かって「真一!見えるか!」と叫んでいた。

それにつられるようにトシさんも泣きながら、「お兄さん!リンさんよ!」と叫んだ。リンさんの目には、赤い夕陽に照らされた雲間から、南十字星がぼんやり浮かびあがり、耳からは「銀河スティション、銀河スティション」という響きがきこえてきた。そんな風にして、慰霊の一日は過ぎていった。

 

院長先生の健康豆知識

『生物進化と呼吸』

医学部に入ると、発生学という教科があります。そこでは、精子と卵子が出会い、人間となる迄の発生過程を勉強します。発生学では、「個体発生は系統発生を繰り返す」、という説があります。

これは受精してからの一連の課程は、魚から、は虫類、鳥類等を経て人類に至った、進化の課程を再現するという説です。この説で印象的な部分は、人間の胎児が、水の中に棲んでいた時代から、陸へ上る時代に適応を遂げる時があり、それはちょうど、精子と卵子が合体してから、三十二日目から一週間のあいだだというのです。そして、ちょうどその頃、母親は、悪阻になったり、流産しそうになったり、妊娠中でも最も劇的な体験をするというのです。この時、胎児は、水中の魚のエラ呼吸から、陸上の肺呼吸への進化の歴史を通過するというのです。

魚のエラ呼吸というのを思い出してみると、規則正しく、しっかりした動きで、エラの中に水を流し続けています。このエラの動きは、呼吸運動なのです。水と空気という、全く異質の媒介のため、意外と思われるかも知れませんが、水から酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するという、立派な呼吸運動です。休みなく続けられる、エラの呼吸運動は、疲れる気配などありません。

ひるがえって人間の呼吸です。胸式、腹式、そして鼻翼呼吸など、様々な呼吸方法があります。そして、緊張した時には、息をつめたり、ころしたり、ホッとした気分になると、ため息をついたり、ヒステリーから過換気症候群になったり、寝ている時に、一時的に呼吸が止まったりと、人間の呼吸は、魚の呼吸と比べると、とても不安定で、千変万化ともいえます。

こうした呼吸の違いは、発生学ではこうして説明されます。人間は陸に上がる時、空気を貯め込む袋を作った。そして、進化と共に、空気の袋を自動的に収縮させるはずのエラの筋肉が、人間の口唇や鼻翼、喉頭などの筋肉になってしまった為、空気の袋を収縮させる別の装置が必要になった。そこで、頚のところにある筋肉をお腹までずり下げ、横隔膜とし、また、お腹や胸の筋肉で、しめつけたりゆるめたりする事で、空気の袋を収縮させ、呼吸することになったというのです。

したがって、人間の呼吸は、横隔膜は頚椎の四番目あたりから出る神経に支配され、胸、腹部の筋肉は、それぞれの背髄から出る神経に支配されているのです。

このように進化により、呼吸は変化し、自動的にエラ呼吸を制御していた、延髄にある呼吸中枢は、大もとの呼吸中枢として残っており、頚椎等の背髄の神経が休んでいる時には、指令を出すという仕組になっているのです。

したがって、種類の違った二つの呼吸中枢があると考えると、呼吸について理解しやすいのです。もし延髄にある呼吸中枢だけがダメになる、という状況が作られたとしたら、呼吸しようと考えている間は呼吸できますが、疲れて眠ってしまった時には、そのまま死に至る事になります。

中枢性の睡眠時無呼吸症候群などは、典型的に、この二つの呼吸中枢の問題が、あらわれている例ではないでしょうか。エラ呼吸のように、肺自身に筋肉がついており、その筋肉が、延髄の呼吸中枢に直接つながり、自動的な制御を受けるメカニズムであれば、人間の呼吸にまつわる問題は、心臓にまつわる問題と、ほぼ同じになっていたでしょう。不整脈や心房細動のように、不整呼吸や呼吸筋細動などで悩むことになっていたかも知れません。

エラから肺呼吸への進化により、呼吸は、心臓と違って、制御可能な運動になりました。それだけに、呼吸の仕方というのには、個人差がでてきます。悟りを得た高僧のように(そんな人がいるかどうかは知りませんが)、いつもゆったりと深い呼吸をしている人もいれば、いつもイライラしたり、不安な様子で、浅くて速い呼吸の方もいます。元気でエネルギッシュな人は、忙しそうに見えても、しっかり呼吸ができている印象を受けます。

「いい呼吸=健康的な生活」という図式が成り立つと考えています。いい呼吸を目指しましょう。いろいろな方法がありそうです。今度この欄でお話しできるよう勉強してみます。皆様方も是非、勉強、挑戦して下さい。

 

感謝祭のお知らせ

9月に入っても暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?いよいよ毎年恒例となっています感謝祭が近づいてきました。今年の感謝祭の詳細が決まりましたのでお知らせいたします。

 日程 平成24年10月14日(日)

 場所 メイン会場 創春館1階

 模擬店   創春館前の駐車場

 バザー会場 富士たちばなクリニック 通所リハビリ室

 時間 バザー・模擬店 午前11時30分より

 メイン会場   午後1時30分より

*バザーについて

バザーは職員が出品したものが集まっていますが、昨年同様に是非皆様からも出品をお願いします。
出品物の条件として、両手で運べる程度の大きさ・重さの物でお願いします。
できれば日用品でお願い致します。本や便利グッズ等はご遠慮願います。
出品数の制限はありませんので、出品希望の方がおられましたら、職員まで、出品物の内容をご連絡下さい。
販売価格に関しては、当法人の判断にて決定させていただきます。
野菜は好評でしたので、今年も可能な方は、職員まで声をかけて下さい。

*メイン会場について

今年も職員による出し物で盛り上げていきたいと思っています。是非ご覧下さい。

*模擬店について

模擬店メニューは毎年好評の焼きそば・からあげ・豚汁・ケーキをはじめ、ところてん・ジュース・かき氷、お子様でも楽しんでいただけるよう、駄菓子とスーパーボールすくいも企画しています。

家族・親戚お誘い合わせの上来館いただきますこと、職員一同心よりお待ちしています。

 

今月の行事予定

☆あかしあの里Ⅱ☆
 7日 お誕生日会
17日 敬老の日
23日 夏祭り
30日 十五夜

 

☆GHしらさぎ☆
10日 敬老会
21日 外食ドライブ
中旬 おやつ作り

 

☆療養棟二階☆
12日 手作りおやつ
13日 買い物ツアー
19日 敬老会
26日 お誕生日会

 

☆あかしあの里Ⅰ☆
13日 寿司&ドライブツアー
17日 敬老会
27日 お誕生日会

 

☆明月☆
未定 敬老の日イベント
  外食ツアー
  ドライブ(榛名湖等)
  お誕生日会

 

☆星辰の家☆
18日 敬老会
25日 お誕生日会

 

☆春らんらん☆
15日 歌の慰問
25日 お誕生日会&敬老のお祝い
    (月見団子作り)

 

☆通所リハビリ☆
 7日 前橋アコーディオンサークル
18~20日 お誕生日会
22日 市立前橋吹奏楽部演奏会
29日 でんきくんコンサート

 

☆朱咲の家☆
 9日 朱咲祭
16日 敬老会
30日 十五夜

 

☆わきあいあい☆
13、14日 敬老会
20、21日 おはぎ作り
27日 パンバイキング
28日 お花見パーティ

 

☆涼風の家☆
16日 お茶会
18日or19日 おやつ作り
日時未定 ボランティアによるハーモニカ演奏会

 

☆療養棟三階☆
13日 買い物ツアー
20日 手作りおやつ
   (茶巾しぼり)
27日 お誕生日会

 

☆あかしあの里Ⅲ☆
19日 手作りおやつ(おはぎ)
11、20日 お誕生日会
30日 十五夜
日程未定 外食

 

☆DSゆめさき☆
 6日 ブッチーライブ
 8日 田口町寿会慰問
10~12日 おやつ作り
13、15、17日 お誕生日会
24、25日 上映会
26日 久保さんカラオケショー
28日 富士見だんべぇ会

 

☆GHゆめさき☆
 1日 原東のお祭り
 9日 秋の球技大会
14日 避難訓練
17日 紅白ゲーム大会
日程未定 大室公園ドライブ

 

文芸作品

突風に よろめく年の ふがいなさ 

無我夢中 生きて来たから 今が有る

喜寿をすぎ 余生にさせぬ 夢を見る

菅野 邦夫様

 

夕暮れを 眺めていれば 辺りみな

     こころ静かに 故郷しのぶ

原田カヅヱ様

 

秋の風 フウセンカズラ ゆらゆらと

藤林 秀夫様

 

編集後記

暑さ厳しかった夏もようやく終わろうとしています。9月号はいかがだったでしょうか?今夏はロンドンオリンピックが開催されました。手に汗を握って『日本(NIPPON)』の応援をされた方も多かったと思います。日本人選手達がメダルを獲得したというニュースは世間を明るくしてくれました。法人内の各部署ではお祭りやドライブなど、様々な楽しいイベントが行われています。今後も『さんぽみち』をとおして明るく楽しいニュースを皆様にお届けしていけたらいいなと思っております。

朱咲 荻野 邦洋