平成23年12月号

さんぽみち12月号もくじ

・療養棟は今日も元気です!!
・今月の事業所便り
・我輩はジータである。
・院長先生の健康豆知識
・文芸作品
・今月の行事予定
・委員会便り
・施設利用及び空き状況
・編集後記

 

療養棟は今日も元気です!!

療養棟2階  のど自慢、幾つになってもいいもんだ!

療養棟2階 11月 写真②.JPG

療養棟2階では、秋ののど自慢を行いました。まず、のど自慢に参加される方の緊張をほぐすために前座として職員による催し物を行いました。先日行われた職員の結婚披露宴の余興のパラパラ風の踊りで、館内は異様な盛り上がりになりました。参加される方の緊張もほぐれたところで、のど自慢大会の開幕です。トップバッターは男性利用者様と男性職員のコンビによる『北国の春』です。男性2人ということもあり、力強い歌声が館内に響き渡りました。続いて職員最年少(18歳!)の女性職員による『津軽海峡冬景色』です。あまりの上手さに皆さん盛り上げるのを忘れて聞き入り、歌い終わると大きな拍手が沸き起こりました。3人目の方は『名月赤城山』4人目の方は『あこがれのハワイ航路』です。お二方共、「人前で歌うんだから練習しなくちゃ」ということで前日の夜8時まで練習されていたのですが、本番は練習以上の歌声で、審査員を魅了し見事合格の鐘を鳴らすことが出来ました。2人とも「練習しておいて良かった。」と合格の鐘に嬉しそうな様子でした。皆さんとてもお上手で、審査員も優勝者を決めるのが難しかったようですが、最終的に優勝者はトップバッターの『北国の春』の男性に決まりました。優勝した男性に賞状と『入浴一番券』を差し上げると、とても喜ばれていました。

 

療養棟3階  こちらはしっとり!秋のお茶会

3階1.jpg/p>

療養棟3階では、落ち葉の壁飾り作りとお茶会を行いました。皆さんモミジやイチョウ、ブルーベリーなど色とりどりの落ち葉を見て、「キレイねぇー、もうこんな季節になったのね。」としみじみと季節を感じ、喜ばれていました。落ち葉を画用紙に貼り付けるだけの簡単な作業でしたが、彩りやバランスなど考えながら、皆さんとても熱心に貼り付けていました。出来上がった作品を額縁に入れると、とても素敵な壁飾りになり、それぞれの作品を眺めて、「うん!、いいよ、これ!!」などと褒めあい、感激されていました。その後、壁飾りを見ながら、皆さんでお茶会を楽しみました。職員の点てた抹茶の鮮やかなグリーンの色を見て、皆さんまた感激しつつ、召し上がっていました。2杯目は抹茶に牛乳を入れ、抹茶オーレにして・・・。皆さん目とお腹で秋を感じる楽しいひとときとなりました。

 

今月の事業所便り

星辰の家  毎年恒例!紅葉ドライブ

seisin2.JPG

星辰の家では毎年恒例の紅葉ドライブに出掛けました。今年の11月は暖かい日が続き、紅葉は少し早いのかなと思われましたが、赤城山のふれあいの森に行きますと、もみじは赤く色づき、広葉樹は黄色に染まり思った以上に綺麗でした。 そんな中で利用者さんとつり橋やキャンプ場を散策したり、又ふれあいの森の中にある「木の家」でお茶を飲んだり、おやつをたべたりと、楽しい時間を過ごせました。

 

ケアセンター朱咲  けやきウォークへ外食

H23年12月号ケアセンター朱咲写真①.JPG

ケアセンター朱咲では、11月18日、22日、25日と3回に分けてけやきウォークへお寿司を食べに出掛けて来ました。久しぶりの外食に笑顔で出発し、車の中で「マグロが食べたい!」などと言う声も聞かれ、とても楽しみな様子でした。店に着き思い思いに好みのお寿司を注文されました。「美味しい」と笑顔が見られお腹一杯になられていました。デザートは別腹で好みのデザートを注文され美味しそうに召し上がっていました。また皆様に喜んでいただける行事を企画して行きたいと思います。

 

通所リハビリ  1年ぶりのドライブツアー

H23.12創春館通リハ③.JPG

11月22日から26日にかけ、秋のドライブに出かけました。この春お花見を見合わせたこともあり、実に1年ぶりのドライブです。今回は嶺公園の紅葉、大胡の風車周辺に咲くさざんか、そして名物、嶺の大量の干し大根を車窓からながめるというコースです。例年に比べるとあたたかな日が多く、紅葉の見頃は遅めとなっていました。嶺公園内のもみじのアーチは、光が射すごとにきれいな色を放ち、下から見上げた裏紅葉もまた格別なものでした。時おり風と共に揺れ落ちるもみじに心が奪われてしまいました。利用者様の中に、もみじについての豆知識を披露して下さる方、昔嶺公園の建設に携わった思い出話をして下さる方もいました。道沿いに長蛇に干されている大根は、「見事!!」の一言。今はあまり見られなくなった風情に、利用者様 職員ともに懐かしい気持ちになりました。 5日間のドライブは晴天にめぐまれ、「よかったよ」「ほんとによかった」と喜んでいただくことができました。皆様の秋の思い出の一つにしていただけたら嬉しく思います。

 

デイサービスわきあいあい  みんなでお祝い!

わきあいあい.JPG

11月25日に、わきあいあい一番のご長寿の方がお誕生日となり、職員、利用者様でお祝い会を行ないました。「この年になってもお祝いしてもらえるのはうれしいよ」と喜ばれていました。ささやかではありますが手作りのプレゼントをさせていただきケーキを皆で食べました。これからも皆さんに喜んでいただけるようなお誕生日会を企画していきたいと思います。

 

GHしらさぎ  白井宿に紅葉狩り

2312しらさぎドライブ001.JPG

11月7日、グループホームしらさぎ入居者全員で、紅葉ドライブと外食会を行ないました。天気にも恵まれ、気温も高く暖かな日でした。外食では、お蕎麦を食べました。普段は少食の入居者の方も1人前をペロリと平らげていました。天ぷらとお蕎麦を満喫して外を少し歩き、紅葉している近くにある木に全員集合して、記念写真を撮りました。紅葉ドライブでは白井宿周辺を巡りました。車内では、紅葉を眺めながら、談笑して大いに楽しみました。帰り道、3時のおやつにと湯の花饅頭を購入して、3時のおやつでは、紅葉の話、おいしいお蕎麦の話で再び入居者様の笑顔を見ることができました。

 

療養棟3階  歌に人生あり、涙あり?

3階誕生日1.jpg

療養棟3階では24日に誕生日会を行いました。11月生まれの方々をみんなでお祝いした後に、一人一人へご家族からの心温まるメッセージを読み上げると、皆さんとても喜ばれ、感極まって涙を流す方もいらっしゃいました。そのあとには職員による「真っ赤な太陽」の熱唱です。さっきまで涙を流していた皆さんも一緒に熱唱され、なかには踊りだす方もいらっしゃいました。短い時間の誕生日会でしたが、涙あり、笑顔ありの一時を過ごすことができた1日となりました。

 

クリニック通所リハビリ  来年は辰年なので

2011クリニック通リハ12月.JPG

クリニック通所リハビリでは、リハビリの合間に手芸への取り組みが盛んですが、今回は来年の干支になる「竜」のきめ込みを作られた利用者様を紹介します。 利き手の右手が不自由なため左手で一生懸命取り組まれています。切ったり貼ったりする時に動かないように押さえることも大変で、重りを使用して工夫しながらすすめられています。苦労して作った分、仕上がり時の満足度はひとしおのご様子です。今回の作品も竜の荒々しさがとても良く出ています。これが何作目になるか分からないほど数多くの素晴しい作品を仕上げられているため、ご自宅で作品展が開けそうですね。今年もあとわずかですが、竜に願いを込めて、来年もさらに良い年になりますように。

 

明 月  こだわりの秋刀魚

明月 秋刀魚①.JPG

明月では、11月8日より「秋刀魚の会」と題しまして旬の食材を用いた食事会を開催しました。やはり秋刀魚と言えば、炭火焼の焼き秋刀魚で、明月のフロアーまでとてもいい香りが漂い、利用者様は今か今かと待っていました。昼食で召し上がっていただくと、「脂が乗っていて美味しい。」「お酒があればもっと最高だよ。」と秋刀魚を堪能されていました。次回のイベントでは、「鍋」を計画していますので、楽しみに待っていてください。

 

療養棟2階  やっぱ、焼きまんじゅうはいいね。

療養棟2階11月イベント2 (480x360).jpg

療養棟2階では、23日におやつ作りで焼きまんじゅうを作りました。以前から利用者様からの要望を耳にしていたので、それに答えるべく焼きまんじゅうとなりました。調理していくにつれて、味噌だれの香ばしい香りが館内に満ちてくると、自然と食堂に集まり皆様興味深々で調理を見守り、お手伝いしてくださいました。昔から食べなれた焼きまんじゅうに懐かしさを感じながら、あっという間に召し上がられました。普段あまりおやつを食さない方も、この日はおかわりを要求するくらいでした。皆様が喜んでくださってとてもよかったです。今度は味噌だれを作ることもしてみたいと思いました。

 

涼風の家  倉渕やまなみ祭見学

涼風の家 H23.11.23やまなみ祭 001 (1).jpg

11月23日に倉渕やまなみ祭を見学に行きました。手作りまんじゅう(田舎饅頭)やそばがきなど、なじみのある食べ物を頂きました。みんなとても美味しくお昼がいらないくらいにお腹いっぱいに頂きました。利用者様の話しだと昔はそば粉が貴重で買えないから自分でそばを作っていたんだよと話されていました。やまなみ祭見学中、利用者様の友人や近所の方々といいろいろ話しができて喜ばれていました。また来年も行きましょう

 

GHゆめさき  慣れた手つきで干し柿づくり

GHゆめさき②.JPGのサムネール画像

グループホームゆめさきでは11月12日干し柿作りを行いました。当日、ご近所の民生委員さんのお宅より柿をくださるとのことで、入居者様2名と一緒に畑まで頂きに行ってきました。畑では下の方になっている柿を入居者様達が採り、民生委員さんのご家族が高いところの柿を沢山採ってくださいました、ホームへ持ち帰ると、皮むきをして頂く皆さんは手慣れたもので、5~60個の柿をあっという間に剥いてしまい、紐で吊るしベランダに干して下さりました。「いつ頃食べられるのかねぇ。おいしいんだよね。」と口ぐちに言われ昔を思い出し本当に楽しそうなひとときでした。柿をくださった民生委員の方ありがとうございました。おいしそうな干し柿がもう少しで食べられそうです。

 

あかしあの里Ⅱ  第2回大運動会

あかしあⅡ.jpg

11月16日に第2回大運動会を実施しました。開会式を行い、ボ―ル回し、宝探し、紅白玉入れを行いました。 紅白のチーム分けをし、競技にはいると皆さん真剣な表情をされていて、とても楽しかったといっていただけました。宝探しでは、ドーナツ、スナック菓子をみつけ、喜んでいただけようで、いい運動になったと言っていただけました。来年は、今回の反省点を改善し第3回大運動会を実施していきたいと思います。

 

あかしあの里Ⅲ  皆さん完食の外食ツアー

2312あかしあの里Ⅲ 001.jpg

11月17日と21日に外食ツアーでお蕎麦屋さんへ行って来ました。お刺身・てんぷら・お蕎麦の定食を注文し、待つことしばし、豪華なお盆が運ばれてきました。あまりの量に皆さん「すごいねぇ。」「食べきれるかしら。」とおしゃっていましたが、時間をかけてそれぞれ完食されました。帰り道は敷島公園のバラ園をとおり、紅葉を見学し大満足で帰ってきました。

 

デイサービスゆめさき  紅葉狩ドライブ

DSゆめさき 紅葉狩り①.jpg

デイサービスセンターゆめさきでは11月2日から5日まで紅葉狩ドライブに出かけました。場所は「赤城木の家」です。4日間とも天候に恵まれ、絶好の紅葉狩ドライブとなりました。紅葉も少し早いかなと思っていましたが、綺麗な紅葉を楽しむことができました。例年ですと建物の中でおやつを食べるのですが、今年は風もなく暖かで静かな日だったため、外のベンチで紅葉を見ながらお茶をいただきました。「また来年も赤城の紅葉を見にこようネ」と、事故も無く楽しく行って来る事ができました。

 

春らんらん  バラ園でお弁当

春らんらん12月 .jpg

春らんらんでは、外出ツアーでバラ園に行ってきました。晴れて、バラ園を見ることができ、外でお弁当を召し上がって頂く事でいつもとは違い、気分転換になり、参加された利用者様からは「楽しかったよ」と絶賛の声が聞かれました。

 

あかしあの里Ⅰ  ケーキパーティーで優雅なひととき

CIMG0611.JPG

あかしあの里Ⅰでは19日にケーキパーティーをしました。美味しい紅茶と甘いケーキでちょっと贅沢な3時のおやつを過ごしていただきました。いくつか種類のある中からお好きなケーキを選んでいただくと、特に女性入居者のお顔が明るくなったように見え、笑顔で美味しいと言いながら、お皿に残ったクリームまで丁寧に召し上がる様子がありました。なるべくお好きなものを召し上がっていただけるように、食事やおやつを考えていきたいと思いました。

 

我輩はジータである  そしてまた貴方に恋している

東郷 彦四郎

第十一章 「終戦そして戦後」

真一の友人石川聖は、1946年3月アメリカでの収容生活を了(お)え、サンフランシスコから帰国の船に乗りました。終戦から半年以上が経っていました。朝食を食べ終わった頃、英語の艦内放送が流れると船内の人達がざわざわと騒ぎ始めました。「おい、富士山が見えると言ってるぞ」との声にいっせいに階段を登り始めたのです。その数、百人位だったでしょうか。確かに三角に白く浮かんだシルエットは富士山でした。神様を眺めるように見つめる兵士達の目には一様に涙がにじんでいました。中には大声で泣き出す人、手を合わせて拝む人もいました。戦地に送り出され、帰る事もかなわぬ身と思っていた兵士達です。夢ではないかという思いと、捕虜となって帰る自分はみんなから非国民と白い目で見られるのではないか、家族にどんな迷惑をかけるのかという不安、そうした様々な思いが混じり、富士山を眺める兵士達の思いは複雑でした。

東京湾に投錨した船から久しぶりに日本の大地を踏みしめた石川は、一面の焼野原に茫然となった。道ゆく人達はぼろ切れを縫い合わせたような衣服に身を包み、満足な靴をはいている人なぞ誰一人いない。そんな姿を見て、石川は米軍から支給された真新しい衣服や靴に身を包んだ自分が、まるでアメリカ人のように感じられるのに驚いた。

「おい石川、俺はこれから実家の静岡に帰るがお前はこれからどうするんだ」とアメリカで知り合った根岸伸が話しかけてきた。石川より5歳程年上だが、先輩面する事なく、気さくに女性の話など話しかけてくれるので仲良くなった。ぱっちりした瞳とテニスで鍛えた均整のとれた身体の根岸は女性に人気があったに違いないが、そんな根岸の口ぐせは「おい石川、やっぱり女性は年上がいいぞ。やっぱり熟女だな」というものであった。

そして熟女の心遣いの素晴らしさを何度も細々と聞かされてきた石川であった。「はい先輩、実は親友から預かった2つの手紙があって、1つは両親へのものなのですが、もう1つが群馬県の女性宛のものなんです。直接山口へ帰るともうその手紙は渡せなくなるかも知れませんので、先に群馬県の前橋という所の女性を訪ね、それから山口へ帰ろうと思っています。」

「群馬なら確か冨田真希という男が、群馬の倉渕という村へ帰ると言っていたぞ。紹介してやる」と言って、三々五々別れていこうとする男達の中から冨田を見つけてきた。相撲でもやっていそうながっしりとした身体に、ぶ厚い唇とやさしい瞳が印象的な無骨な感じの男であった。

「おーい冨田、この石川という男がな、何でも前橋という所に行きたいらしいんじゃ。連れて行ってやってくれんかのう。」

「ああ前橋は私が降りる高崎のすぐ先です。一緒に行きましょう。」

「ありがとうございます。宜しくお願いします」と言って石川、冨田の後をついて歩き出す。

「君の実家はどこですか。」「山口です。」

「山口とはまた遠くへ・・・。群馬は反対の方向だから帰りは大変だね・・・どうして友人の手紙を・・・」

「実は私と友人の真一は同級生で山口からずっと一緒だったのですが、もし2人に万一の事があればとお互い、大事な人への手紙を服に縫い込んでいたんです。私の手紙は真一の服にある筈ですが・・・」

「そうだったのですか・・・」2人焼野原の中を東京駅へ向かって歩き出す。東京駅は空襲で駅舎も焼け落ちていた。駅には沢山の人達がつめかけ、停車中の列車にはあふれんばかりの人が乗り込んでいた。石川と冨田の真新しい服と靴のいで立ちは、やはり好奇の的であった。押し合いへし合いしながら汽車にもぐり込み、約4時間もかかって着いた高崎は、半分以上の家が焼け落ちた焼野原だった。高崎で別れ、前橋で降りた石川が見たのは東京や高崎と同じ景色だった。通りがかりの人に青柳町はどこですかと尋ね、約2~3km程歩いたが、あたり一面家らしきものはなく、番地も分からなかった。出会う人毎に「この人を知ってますか」と言っても「そんな人は知りません」と言われるばかりであった。石川は東京へそして山口へと帰るしかなかった。ようやく戻ってきた夜の東京駅には、薄汚れた浮浪児があちこちにかたまりとなってうずくまり、真一を見つけると米兵と思ったのか「ギブミーチョコレート」と思いもかけない英語で、汚れてぼろぼろになった服で、真っ黒な顔をして必死の形相で迫ってきた。思わず「俺は日本人だ」と大声で叫び逃げ出したが、いずれにせよ山口へ帰るには東京で1泊するしかなかった。宿を探そうと焼け残った家々が見える上野方向へ歩き出してしばらくすると、薄暗がりの中から、水色がかった白っぽいワンピースがほっそりしたシルエットを写し出し、夜目にも真っ赤な口紅がくっきり見える細面の30代前半位の女性が近づいてきた。

「ハロー・・・」と呼びかけられ、思わず立ち止まると、のぞき込むように石川の顔を見ながら、「おや、あなたは日本人ですか?」「は、はい。」と思いもかけない状況にとまどう石川。

「いい服を着ているけど、闇でアメリカ人に取り入ってるの?5銭で私の大事な所を拝ませてあげるけど、どう?」と女性ワンピースの裾をまくる仕種をする。

「いやー、結構です。早く泊まる所を探さなくちゃいけないんで失礼します。」と立ち去ろうとする石川。

「ちょっと待って、泊まる所なら紹介するよ。あやしい所じゃないから大丈夫。」戦場で研ぎ澄まされた石川の動物的な勘は、大丈夫な女性と判断した。「ええお願いします。」

「じゃ案内賃として5銭」と女、手を差し出す。石川ポケットから5銭を取り出し、渡す。女、石川がついてくるのを確認するようにして、川沿いの古ぼけた1軒家に石川を連れてくる。表札には青木の文字が。「私の家(うち)です。泊まるについては20銭でどうでしょう。」

「あなたの家ですか。中に誰かいるのでは?」と恐る恐る聞く石川。

「私1人です。今夜は泊まっていって下さい」と急に女性的なしぐさで、玄関をがらりと開け、真一の肩を抱きかかえるように中に入る。玄関を入ると、3畳間の部屋にちゃぶ台が置かれている。電灯の明かりで見る女性は清楚な主婦の様相で祐子と名のった。お茶でも一杯どうぞと言いつつ、女は興味深そうに真一に根掘り葉掘り質問する。石川は質問には答えるものの、どうすればいいのか分からずキョロキョロあたりを見まわしていると、女「お疲れになったでしょう、そろそろ寝る時間ですね」と言って、ふすまを開けると六畳程の居間に床の間に飾られた掛け軸を背にして1組のふとんが敷いてあった。

翌朝、女に見送られ家を出た石川は、やはりあふれんばかりの人が積み込まれた大阪行きの汽車に乗った。通路に場所を確保し、昨夜の事を思い返していた。あの時女は「こうして私達が生きているのは、生きようと思って生きてるんじゃない。たまたま生きているんだから、生きるだけなのね。」と言った。そして女は石川の頭を抱きかかえるように白い胸元へ引き寄せ、耳元で小さく、しっかりした声で「よく帰ってくれたねえー。でかした、でかした。」と励ますようにつぶやいた。暖かい柔肌の感触と女の臭いに石川は訳も分からず涙がこんなに出るかと思う程流れてきた。

そんな風にして、石川は2日間にわたって汽車を乗り継ぎ故郷の山口県、萩に着いた。真っ先にかけつけたのは自分の家ではなく、真一の家だった。「お父さん石川さんが帰ってきましたよ」との母親の大声に、驚いた様に真一の父親があらわれると、突然石川は玄関の土間に土下座し、「申し訳ありません。帰ってきました」と大きな涙声で叫んだ。「何言ってるのよ、よく帰ってくれた。よく帰ってくれた」と母親が、石川を大きな仏壇のある座敷に招き入れたが、父親は目に涙を一杯浮かべ言葉が出なかった。しばらくして石川がおもむろに懐から真一の2つの手紙を取り出し、畳の上に置き、これしか持って帰る事はできませんでした」と言うと、父親は思わず「真一、真一」と言ってその手紙をかき抱き泣き叫んだ。

そうして石川の戦争が終わろうとする頃、リンは前橋ではなく実家の新潟の十日町という所にいた。石川とは会えない筈じゃ。終戦は勤めていた陸軍病院で迎えた。玉音放送の日は、焼け残った会議室に置かれたラジオで聞いた。空の青さが目に焼きつくような快晴の日じゃった。群馬から一緒にきた中島いずみも側にいた。進駐軍の兵士達に女達は暴行されるとの噂が流れ、逃げられる者は急ぎ逃げよとの指令があったのじゃ。そうして中島いずみは群馬に、リンさんは新潟に帰った。みんな戦争に翻弄された人達じゃ。今は2011年12月、新しい年を迎えようとしている。幸せを願う気持ちを忘れずに生きてごらん。ジータはじっと見守っているよ。

 

院長先生の健康豆知識

『高齢者の心不全について』

数年前のことですが、前橋日赤病院から、高血圧の治療で困る症例を報告呈示してくれと頼まれたことがあります。入所、通所の方の血圧と服んでいる薬を調べたのですが、大抵の場合、1剤か2剤でコントロール良好で、3剤以上の降圧薬を使っている人は稀でした。こうした結果から、我々施設に通ったり入所したりしている高齢の方々は、不整脈や心筋梗塞、心筋症などの心臓病から免れ生き延びた人達で、血圧や心臓病については年代による考慮が必要じゃないかという決論を出したのですが、その決論はやはり正しいようで、高齢者の方々を見ていますと、不整脈や心筋梗塞で問題を起こす事は少なく、日頃遭遇する心臓の問題というと大抵は慢性心不全の増悪という事になります。

創春館やグループホームに入っている人の場合、ちょっと食欲が落ちたとか顔がむくみっぽくなったと思って胸部のレントゲンを撮ると心臓が大きくなり、肺に水が溜まっていたりするのです。大抵の場合、治療により改善する心不全なのですが、普段普通に生活している高齢の方々にもそうした心不全の予備軍の方が、沢山いるようです。

もともと発生学的に心臓は一本の血管が輪っかをつくってできた臓器です。輪っかのこぶが心臓で、そこから4つの部屋ができ肺と繋がったものですから、当然心臓も血管の一部と考えられる訳です。したがって胸部写真の心臓の陰影を見る場合、肺気腫の方は例外として、一般に心臓のシルエットがほっそりしている程いい心臓という訳です。

また、今盛んに言われているメタボリックシンドロームによる動脈硬化というのは、当然心臓にも他の動脈と同じような影響を与える事になります。動脈硬化とはその字の通り、動脈が硬くなる事です。硬くなるだけならいいのですが、そうはいきません。当然血液の通り道が狭くなり、弾力のない血管では必要とされる部分へ充分な血液を送れない事にもなります。当然その影響は足や手だけでなく、脳にも及ぶことになります。脳に充分な血液が回らないのでは、考える力も衰えようというものです。

動脈硬化の原因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病からやはり高齢者の心不全が起こることになります。心臓も硬くなるのです。硬くなり広がりにくく狭くなった心臓は肺からの血液を充分受け入れる事が出来ず、肺に血液があふれ、水が溜まる事になります。 こうしたメカニズムによる心不全の割合は動脈硬化と比例する為、年齢と共に増加する事になります。実際のところ高齢者のこうした心不全の方が最近増えているようです。

もともと動脈硬化があり、最近動くと息切れしやすくなったり、夜寝床に入ると息苦しくなったり、足のむくみが増えてきた、食欲が落ちてきたなどの症状がある高齢の方は、年のせいと考えるのではなく、心不全の初期症状かも知れませんので、受診が必要です。治療により日常生活の改善がみられる可能性があります。

血管の弾力というものを考える時、つくづく運動が一番動脈硬化にいいのではという決論にいきつきます、運動しましょう。できれば汗ばむ程に。

 

文芸作品

暮れなずむ 幸せの夜は さみしさの

   ひときわまして 心細くなる

原田 カズヱ様

 

過ぎし日の 夢思い出に 過ぎてゆく

若き日の 心あらわに 友しとど

星野 武司様

 

今月の行事予定

☆あかしあの里Ⅱ☆
13日 お菓子作り
24日 クリスマス&忘年会
下旬 外食ツアー

 

☆あかしあの里Ⅲ☆
15日 忘年会
20日 大掃除
25日 クリスマス

 

☆DSゆめさき☆
 1日 ブッチーライブ
12日~14日 おやつ作り
15日~17日 映画上映会
19日 久保のぶゆきカラオケショー
21日~22日 お誕生日会
24日 クリスマス会
26日 そばうち
30日 忘年会・もちつき

 

☆GHゆめさき☆
4日 朱咲運動会
18日 家族会&忘年会
25日 クリスマス会

 

☆涼風の家☆
 4日 第2回町民クリスマス会
未定 餅つき大会
下旬 クリスマス会

 

☆GHしらさぎ☆
15日 おやつ作り
23日 クリスマス会
26日 餅つき大会

 

☆春らんらん☆
20日 クリスマス&お誕生日会
27日 餅つき

 

☆朱咲の家☆
 4日 ゆめさきとの交流会
16日 お誕生日会
23日 合同クリスマス会

 

☆あかしあの里Ⅰ☆
中旬 おやつ作り(たんさんまんじゅう)
クリスマス 音楽療法演奏会
年末 餅つき

 

☆わきあいあい☆
15日 お誕生日会
16、21、22日 クリスマス会
26、27日 忘年会

 

☆星辰の家☆
 7日 忘年会 鍋パーティ
21日 クリスマス会
中旬 お誕生日会

 

☆療養棟3階☆
22日 クリスマス会(ケーキ作り)
28日 餅つき(2、3階合同)
29日 忘年会

 

☆療養棟2階☆
14日 お誕生日会
21日 クリスマス会&おやつ作り
28日 もちつき&忘年会

 

☆明月☆
24日 GH・DS合同鍋クリスマス会
   GH・DS合同忘年会

DS       GH
ドライブ     ドライブ
お誕生日会    お菓子作り

 

☆通所リハビリ☆
 7日 たから幼稚園
 8日 民謡踊り教室
10日 ママさん音楽隊
12、13日 お誕生日会
17日 アンサンブルそよ風
24日 ヴィクトリー川田とブルーサウンズ クリスマス会
30日 お疲れ様会

 

委員会便り

親睦委員会

カラオケ6.jpg

今年の親睦委員会では、例年と違った趣向を凝らし「部署対抗カラオケ大会」を開催しました。感謝祭当日に決勝トーナメント戦を行うべく、各部署が思い思いのパフォーマンスで予選を戦い、「療養棟Aチーム」「療養棟Bチーム」「クリニック&事務チーム」「明月&涼風チーム」の4チームが決勝トーナメントにコマを進めました。ご利用者様と一緒に歌を歌い会場を盛り上げるチーム。テニスラケットをギターに見立てて激しく踊るチーム。結婚式を再現して演歌を熱唱するチームなど、決勝トーナメントでは勝敗を決めるのが難しい熱戦が繰り広げられました。会場には沢山の利用者様と家族様にも来ていただき、大きな声援や拍手で会場を盛り上げて下さいました。

その日最高潮の盛り上がりの中、決勝戦は療養棟Bチームの歌う『夏祭り』と、明月&涼風チームの歌う『大空と大地の中で』の対決になり、どちらのチームも会場と一体となり、とても素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

そして、運命の結果発表!ドキドキする瞬間…。初めてのカラオケ大会を制したのは、「明月&涼風チーム」でした!歓喜に沸く中、優勝チームには名倉院長から豪華優勝賞品が授与され、優勝チームのスタッフは大喜びでした。

最後には皆でふるさとを熱唱し、初の試みとなったカラオケ大会は、大盛り上がりの中で幕を閉じました。また来年度も、皆様が楽しめるような親睦イベントを開催したいと思いますので、ご協力の程よろしくお願いいたします。

(今回、カラオケ大会でご協力いただきました方々には親睦委員会一同より御礼申し上げます。)

親睦委員会委員長  並木 千香史 

 

編集後記

今月のさんぽみちはいかがでしたでしょうか。
平成23年を振り返ったとき、幾度となくテレビに映された東北の光景が思い浮かびます。私は、あの瞬間を妻との食事の最中に迎えましたが、三十数年という人生の中で初めて、恐怖で足がすくむ感覚を知りました。わが身の危険と言うよりは、普段何気なく過ごす日常が、一瞬でその姿を変えるのを目の当たりにしている事実が大きすぎて、ただ愕然としていたことを覚えています。
今日が終わり、迎える明日があることは当たり前ではなく、有り難いことですね。間もなく今年も終わろうとしていますが、新たな年を迎えるその時、感謝の心でいたいものです。この1年、本当にありがとうございました。

編集委員 根岸 伸(事務)(愛妻家)